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陽が落ちる(4) ◆S8pgx99zVs 【19:16】 「魔法少女×3」 陽も完全に落ち、通り抜ける風が少し肌寒い病院の屋上。 その屋上の端、南北に流れる河に浮かんだ闇の書、そしてその奥に聳えるギガゾンビの城が よく見えるその場所に、三人の魔法少女(?)が立っていた。 真っ赤な聖骸布を吹き抜ける風に任せているのは、――遠坂凛。 降ろした髪で、失った右目を隠しているのは、――フェイト・T・ハラオウン。 そして、遠坂凛が目を背けるほどの派手な衣装に身を包むのが、――涼宮ハルヒだ。 その時――つまりは、闇の書の始動に向け、彼女達はこの屋上で待機している。 「フェイト。その髪型も似合うわね」 「ありがとう、凛。そして、ありがとうございますハルヒ」 「なーに、いいのよ。お礼を言われるほどのことでもないわ。 可愛く萌える少女を、常に萌える状態に保ち、より高みを目指せさせるのも、SOS団団長の仕事だから」 ハルヒの言葉に苦笑するフェイトの、金色の髪――グリフィスによってツインテールの片方を落とされたそれは、 今は襟足をうなじに合わせたショートカットとなっている。 傷つき失われた右目を覆うように前髪は下ろされ、残ったツインテールからサイドの部分だけを残して、 それを頬の横に垂れる三つ編みにしている。その先端を結っているのは、彼女の親友であるなのはのリボンだ。 遠坂凛の治療を受けた後、ハルヒがフェイトの姿に見かねて、器用に鋏を振るった結果だった。 「で、あんたのソレはなんなわけ……」 遠坂凛が指摘するのは、ハルヒの纏う派手でアニメチックな衣装だ。 桃色を基調に金色のラインが引かれているデザインは、遠坂凛が記憶から抹消したいと願うカレイドルビーのそれに似ている。 だが、カレイドルビーの衣装に比べると、ハルヒの衣装は胸元は大胆に開きスカートはより短く扇情的だ。 花の様に開いたフレアスカートの端からは、幾重にも重なったレースのペチコートが覗いている。 そして、亜麻色の髪の毛は後ろで一つに纏められ、小さなポニーテイルになっていた。 「バランスの問題よ。あたしだけ一人制服なんておかしいし、なによりずるいわ」 ハルヒの理屈に、遠坂凛の顔は理解できないといった表情だ。 華麗に変身――などというのはフェイトの様な子供だけに許されるもの。そう彼女は思っている。 「……で、その衣装はどこから取り出したわけ? まさか、無駄に力を振るったんじゃないでしょうね」 衣装のデザインはともかくとして、ハルヒが力を使ったと言うなら、それは遠坂凛にとっては見過ごせない所だ。 「違うって。これは着せ替えカメラを使ったのよ。ドラえもんの世界の道具」 言いながら、ハルヒは衣装の端を摘まむ、 「これはね。みくるちゃんのために用意しておいたの。……彼女に着せてあげようと思って」 その言葉に遠坂凛とフェイトの二人はかける言葉を失った。 彼女達も此処で失った掛替えのない人や仲間達がいるが、数で言えば――勿論、それは比べるものではないが、 ハルヒが一番多く親しい人を失っている。何せ、彼女は世界を作り変えようとしたほどの悲しみを受けたのだから。 「なーに暗くなってんのよ。もうすぐコレも終わりでしょう。だったら気合入れないと! それよりもさ、アレちょーだいよ。ア・レ♪」 沈黙は破ったのはハルヒだ。そして、殊更に明るく振舞うと遠坂凛に向けて手を突き出す。 その様子は、待ちわびたプレゼントをねだる子供の様に幼く明るい。 「本気のつもり……なの?」 「今は猫の手でも借りたい……でしょ?」 遠坂凛はうーん、と唸るがハルヒの言うことも正しい――いや、この場合は困った時の神頼みと言い直すべきだろうか? 渋々ながらも鞄に手を突っ込み、遠坂凛は取り出したソレをハルヒの手の上へと置いた。 ハルヒの手の上にあるのは、翠星石のローザミスティカとグラーフアイゼンだ。 同様に、遠坂凛の手には水銀燈のローザミスティカとレイジングハート。 フェイトの手には、蒼星石のローザミスティカとバルディッシュ・アサルト。 三人の少女の手に、三種のローザミスティカと三種のデバイスがあった。 「取りあえず私からいくから、フェイトとハルヒはちょっと待ちなさい」 言いながら遠坂凛は水銀燈のローザミスティカを胸元へと寄せる。 そして、一度深呼吸すると、その因縁深い相手が残したそれを自身の中へと押し込んだ。 遠坂凛の全身に薔薇乙女の力が循環し、魔力が満ちる。そして、その影響か、纏うバリアジャケットが若干闇色に染まる。 「……うん。いけるわね、大丈夫。レイジングハートの方はどう? いけそう?」 ” All right. 問題ありませんマスター。出力も安定しています ” 杖の返答に満足すると、遠坂凛はフェイトにも同じ様にすることを促した。 そして――、 「……すごい。バルディッシュはどう?」 ” No problem sir! ” 剪定の鋏を得物とする薔薇乙女の力がそれにも宿ったのか、バルディッシュの刃が蒼い燐光を帯びた。 そして――、 「次は私の番ね。さぁ、出てきなさいっ!!」 ハルヒが指を鳴らすと――瞬間、屋上の縁より光を纏う巨人が頭を覘かせ、立ち上がると共に高さを増す。 そして、ハルヒが放り投げたグラーフアイゼンを片手に受ける。 その鎚は、神人からすれば豆粒のような大きさだが、 続けて投げ込まれた翠星石のローザミスティカを取り込むと、 その大きさを神人が持つに相応しいまでに増した。 「大したものね……」 遠坂凛は無制限とも言えるハルヒの能力に感嘆した。 短い時間で彼女がハルヒに指導したのは、「魔力が流れるとデバイスが働く」――それだけだ。 全く理屈にもなっていないが、むしろこの方がよい。想えば実現する力に対し、複雑な理屈はむしろ足枷にしかならない。 ハルヒに対しては、とにかく簡単に考えること――と、徹底して注意している。 神人の扱いに対してもそうだ。余計な事を考えず、玩具のラジコンを操作しているぐらいのつもりであれと、言い含めた。 そして、今は扱い方のよくわからない他の事に対しては一切考えるなと。 「ハルヒ。さっきも言ったけど……」 「わかってるってば。 ここで神人を動かす。それ以外には何もしない。で、疲れたらそれもやめる――でしょ?」 「私達の役割は闇の書を倒すことじゃなくて、あくまで引き付けて足止めすることだから……、それを忘れないで」 それだけを言い残すと、遠坂凛とフェイトは屋上の床を蹴って、夜の空のより暗い場所へと飛び去った。 【B-4/河川上空/2日目・夜】 【遠坂凛@Fate/stay night】 [状態]:疲労、全身に打撲痕、魔力全快、バリアジャケット装備(アーチャーフォーム+銀) [装備]:レイジングハート・エクセリオン(カートリッジ-6/6)※自己修復中、後一時間程度で終了 予備カートリッジ×21発、アーチャーの聖骸布 [道具]:デイバッグと支給品(食料残り1食分、水残り1本と6割)、石化した劉鳳の右腕、エクソダス計画書 [思考]: 基本:レイジングハートのマスターとして、脱出を目指す 1:闇の書に応対し、脱出までの間その場に引き止めておく 2:ハルヒが暴走しないか、気にかける 3:できれば、リインフォースを救い出したい [備考]: ※リリカルなのはの世界の魔法、薔薇乙女とアリスゲーム、ドラえもんの世界の科学――の知識があります ※闇の書の防衛プログラムとその暴走――の知識があります ※ギガゾンビは第二魔法絡みの方向には疎い――と推測しています ※膨大な魔力を消費すれば、時空管理局へ向けて何らかの救難信号を送る事が可能――と推測しています 【フェイト・T・ハラオウン@魔法少女リリカルなのはA s】 [状態]:軽度の疲労、全身に打撲痕、右脇腹に傷跡、右眼球喪失、魔力全快、バリアジャケット ※髪型が変わりました。全体的にはショート、前髪で右目を隠して、右サイドにおさげを垂らしています [装備]:バルディッシュ・アサルト(カートリッジ-6/6)、なのはのリボン [道具]:デイバッグと支給品一式、予備カートリッジ×22発、クラールヴィント、西瓜、エクソダス計画書 [思考]: 基本:戦闘の中断及び抑制。協力者を募って脱出を目指す 1:闇の書に応対し、脱出までの間その場に引き止めておく 2:涼宮ハルヒが無茶をしないか心配 3:事が終わったら、タチコマ(AI)ともう一度話をしてみたい 【19:22】 「涼宮ハルヒの憂鬱」 遠坂凛とフェイト、その二人が魔法の力で闇の書に向けて飛び立ち、病院の屋上から離れると ハルヒはその場でコンクリートの床へとへたり込んだ。口からは熱い息が漏れる。 秋に咲く桜の花。連続するホームラン。エトセトラ、エトセトラ……。 何故、こんなにもあからさまなのにそれに気付けなかったのか――それをハルヒは理解していた。 キョンにより気付かされた神の如き力。 それはすさまじいものだという実感が、すでにハルヒにはある。 少し、ほんの少し意識を寄せるだけで、何もかもをが手に取るように解る。 何処に何があるのか、例え目の届かないところでも。風の動き、空気の振動、分子の振動、電子の振動。 そして、この病院の片隅。そこにある一つのつぼみに”咲け”と想えば――花を咲かせることができた。 「…………ッう!」 激しい痛みにうずくまり頭を抑える。 普通の人間にも、周囲の情報を感じ取る五感というものがある。 ――視覚。聴覚。触覚。味覚。嗅覚。 細かく分類すれば、さらに――温覚。冷覚。痛覚。運動覚。圧覚。振動覚。内臓覚。平行覚。等々……。 だが、それらを意識するのはそれらが特に強い刺激を受けたか、もしくは変化があった時だけだ。 普段からそれらを全て意識していることなどない。 ――口の中の味。肌に触れる空気の感触。自分自身の体温。 そんなものを普段から意識していれば――脳で処理していればどうなるか。 処理能力が追いつかなくなってオーバーヒート、そして遂にはダウン。または機能衝突が起きて――狂う。 神の力を何故ハルヒ自身が自覚できなかったのか? その答えは今出ている――耐え切れないからだ。 人間の脳は、人間の中の感覚だけですら全てを同時に処理することはできない。それが、――世界などとは。 「……まったく。やっかいな事を教えてくれたわねキョンったら」 口の端から垂れる涎を拭うと、ハルヒは再び立ち上がりコンクリートの床を踏みしめた。 それに呼応するかのように、神人も姿勢を正す。そして、一歩、一歩と踏みしめて闇の書へと向けて歩きだした。 「世界を大いに盛り上げる……か。 まさか――だけど、いいわ。この涼宮ハルヒ様が直々に盛り上げてやろうじゃない。 でも、その前に自分の世界に帰らないとね。神様が迷子だなんて笑い話にもならないわ」 【D-3/病院・屋上/2日目・夜】 【涼宮ハルヒ@涼宮ハルヒの憂鬱】 [状態]:頭痛、微熱、頭部に打撲痕 [装備]:なし [道具]:デイバッグと支給品一式 クローンリキッドごくう(使用回数:残り2回)、タヌ機(1回使用可能) インスタントカメラ×2(内一台は使いかけ)、高性能デジタルカメラ(記憶媒体はSDカード) 着せ替えカメラ(使用回数:残り16回)、どんな病気にも効く薬 トグサが書いた首輪の情報等が書かれたメモ1枚 [思考] 基本:元の世界へと帰る 1:神人を操作して闇の書と戦う ※神人の操作以外については出来る限り控える [備考] ※神の如し力について認識しています ※神人の力は、ハルヒ自身の体調とシンクロしてその力が強弱します ※閉鎖空間を作るつもりはもうありません 【C-3/市街地/2日目・夜】 【神人@涼宮ハルヒの憂鬱】 [状態]:体長30メートルほどの大きさ、ローザミスティカ(翠)の魔力を取り込んでいる [装備]:ローザミスティカ(翠)、グラーフアイゼン・ギガントフォルム(カートリッジ-0/0) ※神人(涼宮ハルヒ)自体にグラーフアイゼンを操る力(魔力)はありません ※ローザミスティカの魔力を使い切ると、グラーフアイゼンは待機状態へと戻ります ※神人の力は、ハルヒ自身の体調とシンクロしてその力が強弱します 【19:19】 「SHOOTER」 舞台の中央を南北に走る道路。そこを一台の救急車が、やや緩やかな速度で北へと進んでいた。 その車には一見して分かるおかしな所があった。天井に人が立っているのである――勿論、それはレヴィだ。 この時、レヴィのご機嫌のボルテージはここに来てより、最高潮に達していた。 不愉快な首輪が外れたということもある。これから行うカチコミに興奮しているということもある。 また、遠坂凛が見つけた予備弾薬セットの中から、レヴィの銃に合致する、大量の9mmパラベラム弾が 見つかったということもある。 余談であり、参加者達が知る由もないが、銃の種類に応じてそれぞれの弾丸が一定数用意されていた。 9mmパラベラム弾に関しては、六種の拳銃がそれに対応していたため、弾だけを見れば他の六倍もあったということだ。 ――で、何故レヴィが上機嫌なのか? それは彼女の手の中に、いつもの一対の拳銃が握られているからだ。 ソードカトラス。――何故、二挺目のそれが出てきたかと言うと、答えは簡単――技術手袋だ。 ゲイナーが持っていたそれを彼女が奪い、そして持っていたベレッタをソードカトラスへと改造した。 元々、ソードカトラスはベレッタを改造したものだし、得意の得物の解体組み立てならレヴィは目を瞑っていてでもできる。 かくして、彼女はまるで魔法をかけられた灰被りのように浮き足立っていた。 「南瓜の馬車をとばせ、溝鼠の御者ッ!! さっさと行かねえと、舞踏会に遅れちまうぞッ!!」 ハイテンションではしゃぐお姫様の下、運転席とその隣の助手席にはロックとゲインがいる。 「ご機嫌麗しゅう……だな。ロック」 「とんでもない事にならなければいいんだけどね」 ゲインの言葉に、ハンドルを握るロックは苦笑した。 ハイテンションになった時のレヴィは無敵だ。だが、こうなるとかならず派手(やっかい)な事になる。 巻き込まれ役のロックとしては、今の心境は、天気予報で台風が近づいているニュースを聞いた時のものに近かった。 そのロックの、そしてゲインの前まで、フロントガラスは全て破られガラスが落とされている。 そして空いたそこから突き出しているのは、ゲインのNTW20対物ライフルだ。 レヴィが天井の上にいるのも、馬鹿と煙は……ということではない。ギガゾンビ側の応戦を警戒してのことだ。 軽口を叩きながらも、ゲインはその鷹の目を思わせる鋭い眼光で、何時でも応戦できるよう周囲を睥睨している。 すでに臨戦態勢に入っている大人達の後ろ、救急車後部のスペースには子供たちがいた。 「おおー、近くで見るとすごーくでかーい」 運転席の隙間から前方を見ていたしんのすけが声を出す。大きいと言ったのは河の真ん中に鎮座する闇の書の結界だ。 そして、しんのすけの後ろでは、それを緊張した面持ちでドラえもんが見つめている。 巨大で、そしてあまりにも禍々しい姿。魔力を持たなくとも感じる威圧感。それがもたらす緊張に、鉄棒を持つ手に力が篭る。 その、ドラえもんが持っている鉄棒は、ゲイナーが技術手袋を用いて作ったスタンロッドだ。 病院内で見つけた非常用発電機の部品から組み立てた物で、持ち手の部分に小さなディーゼル発電機を内臓しており、 燃料の補給で長く使えるようにという工夫がなされている。……最も、そのせいで結構な重量になってしまったのだが。 そのゲイナーお手製のスタンロッド(発電式)は、銃を扱うのが苦手なドラえもんとロックの手に渡っている。 そして、そんな仕事をしたゲイナーは、今はツチダマのユービックと一緒になって、コンラッドの持ってきたノートPCを修復していた。 「これで……、完成ですよ」 「うむ。では少し貸してくれ」 修復され新品同様になったノートPCに、ユービックが身体から伸ばしたコードを接続する。 すると、そこにトグサの顔と、トグサがギガゾンビのコンピュータのデータベースから得た、城内の見取り図などが現れた。 電脳通信を経て、病院に残ったトグサから、――ユービック――ノートPCと言う経路で情報の線が繋がったのだ。 「無事に繋がったようでなによりだ。こちらからは解析が済み次第、有益な情報をそちらに送るつもりだ」 ノートPCのスピーカーから、トグサの声が聞こえる。電脳を持たないゲイナーは、キーボードで彼に感謝の意を返した。 「ああ。そちらもうまくやってくれ。俺はここから最大限のサポートさせてもらう。 そちらから連絡がある時は、ユービックに伝えてくれ。彼となら瞬時に繋がることが可能だ」 ――では、お互いにいい仕事をしよう。そう残してトグサからの通信は終わった。 ウィンドウの表示が待機に変わると、ゲイナーはすぐさまノートPCのキーボードを叩き、トグサの送ってきた情報を呼び出した。 まず得られたのは、ギガゾンビ城内の見取り図とセキュリティシステムの概要だ。 敵が現れれば、これを悠長に見ている暇はないだろう。 到着までの時間は短い。ゲイナーはそれを頭に叩き込むべく、精神を集中し自分の世界へと没頭し始めた。 そして、通信を終えて手持ち無沙汰になったユービックに、ゲインが前を向いたまま声を掛ける。 「どこでもドアを使って、ツチダマ達がトグサに奇襲を仕掛ける……本当にそれはないんだな?」 それは、ギガゾンビ城に討ち込むに当たって最も危険視された要素だ。 敵の戦力を抑え、喜緑江美里からの通信――すなわち脱出経路の確保――それを待つトグサの重要度は極めて高い。 当初は、トグサのガードとして何人か人間を残すかと話し合われたが、 唯でさえ乏しい戦力を分散させるのは愚策であり、そして自分一人なら守りきれるというトグサの主張と ユービックの言う、どこでもドアはもう他にないはずだという情報によって、今の配置が決定された。 ユービックはその情報を、今またここで繰り返して話す。 「元々、持ち出すことのできた23世紀の道具は少ない。ギガゾンビは時間犯罪者だからな。近寄ることすら困難だった。 我々ツチダマも、23世紀ではなく、ロボット工学についてはより高度な他の世界で作られたのだ。 結果、我々は自我とそれを判断する力を得ることができた。グリフィス様に仕えるのも、お前達に協力するのもそのおかげだ。 ……それでだ。言ったとおりどこでもドアの数も少なかった。そして、それは我ら亜空間破壊装置監視要員が 交代する時にしか使われていない。 その後、偶然にもグリフィス様に仕えることになった私を含む最初の四体のツチダマは、 その時にどこでもドアを占有することに成功した。……だからもうどこでもドアはないはずだ」 ふむ、とゲインは改めて納得した。最も、最初に納得していなければこうはなっていない。 と、その時ガンガンと天井を叩く音が車内に響いた。勿論、それはその上にいるレヴィの仕業だ。 「お出迎えが見えたぜ! 熱烈大歓迎だ!」 「ああ。気付いているさ。……みんな、耳を塞いでおけよ!」 言うが早いか、ゲインの構える対物ライフルが車内に轟音を響かせ火を噴いた。 視界の奥、車内からは米粒程度にしか見えない一体のツチダマが、放たれた弾丸に貫かれ爆ぜる。 それを機に、向かう道路の先にわらわらと無数のツチダマ達が現れた。 車上のレヴィが構えるソードカトラスではまだ遠い位置だ。だが、時機にそうでもなくなる。 「ダンスホールにゃまだ遠い……。けど、あたしは踊る場所を選らばねえ……、いいぜ。かかってきな!」 一瞬で、両手のソードカトラスが八つの残光を夜の空間に残した。次の瞬間、八体のツチダマが地面に転がる。 ――さぁ、野郎共ッ! ショータイムだッ! 【B-4/路上・救急車/2日目・夜】 【レヴィ@BLACK LAGOON】 [状態]:脇腹と右腕に銃創、左腕に傷跡、やや疲労、ハイテンション [装備]:ソードカトラス×2 (残弾11/15、11/15-予備弾薬×261発) [道具]:デイバッグと支給品一式 イングラムM10サブマシンガン (残弾30/30-予備弾薬×30発) グルメテーブルかけ(使用回数:残り16品)、ぬけ穴ライト、テキオー灯 バカルディ(ラム酒)×1本、割れた酒瓶(凶器として使える)、エクソダスと首輪解除に関して纏めたメモ [思考] 基本:バトルロワイアルからの脱出。物事なんでも速攻解決!! 銃で!! 1:とにかく撃ちたい。撃ちまくりたい! 2:向かってくるヤツは容赦せず撃つ! 3:逃げるヤツも容赦せず撃つ! 4:もちろん、バリアジャケットのことを言触らかすヤツも撃つ! これは念入りに撃つ! 5:機会があればゲインとやり合いたい [備考] ※双子の名前は知りません ※魔法などに対し、ある意味で悟りの境地に達しました ※テキオー灯の効果は知りません 【ロック@BLACK LAGOON】 [状態]:眠気と疲労、鼻を骨折(手当て済み) [装備]:ゲイナー製スタンロッド (電気100%、軽油2回分)、マイクロ補聴器 [道具]:デイバッグと支給品一式、現金数千円、たずね人ステッキ、エクソダス計画書 [思考]: 基本:力を合わせ皆でゲームから脱出する。出来ることならギガゾンビに一泡吹かせたい 1:皆を乗せた救急車をギガゾンビ城まで運転する 2:しんのすけ、ゲイナー、ドラえもん、ユービックを守る 3:ギガゾンビを見つける [備考] ※顔写真付き名簿に一通り目を通しています ※参加者は四次元デイバッグに入れないということを確認しています ※ハルヒ、キョン、トウカ、魅音、エルルゥらと詳しい情報交換を行いました ※キョンの持つノートPC内の情報を得て、考察しました ※レヴィの趣味に関して致命的な勘違いをしつつあります 【ゲイン・ビジョウ@OVERMANキングゲイナー】 [状態]:右手に火傷(小)、全身各所に軽傷(擦り傷・打撲)、腹部に重度の損傷(外傷は塞がった) [装備]:NTW20対物ライフル(弾数2/3-予備弾薬×37) ウィンチェスターM1897 (弾数5/5-予備弾薬×105発) 454カスール カスタムオート (残弾:7/7発-予備弾薬×94発) RPG-7×2(榴弾×80発、スモーク弾×81発、照明弾×81発) 悟史のバット [道具]:デイバッグと支給品一式、スパイセットの目玉と耳(×2セット) 、どこでもドア トラック組の知人宛てのメッセージを書いたメモ、エクソダス計画書 [思考] 基本:ギガゾンビを打倒し、ここからエクソダス(脱出)する 1:進路を阻むツチダマを除外する 2:重火器を用いて、ギガゾンビ城突入を援護 3:ギガゾンビを探し出し、捕まえる 4:事が終われば、トウカと不二子の遺体を埋葬しに戻る [備考] ※首輪の盗聴器は、ホテル倒壊の轟音によって故障しています ※モールダマから得た情報及び考察をメモに記しました ※ユービックのことを一応は信用はしましたが、別の嫌悪感を抱き始めています ※どこでもドアを使用してのギガゾンビ城周辺(α-5のエリア一帯)への侵入は不可能です 【野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん】 [状態]:全身にかすり傷、頭にふたつのたんこぶ、腹部に軽傷、 SOS団名誉団員認定、全身が沙都子の血で汚れている、強い決心 [装備]:ひらりマント [道具]:デイバッグと支給品一式×4(食料5食分消費) わすれろ草、キートンの名刺(大学)、ロープ [思考] 基本:皆でここから脱出して、春日部に帰る 1:みんなのお手伝いをする 2:ギガゾンビを見つける 3:全部終わったら、かーちゃんに報告する [備考] ※両親の死を知りました 【ドラえもん@ドラえもん】 [状態]:大程度のダメージ、頭部に強い衝撃、強い決意 [装備]:ゲイナー製スタンロッド (電気100%、軽油2回分) [道具]:デイバッグと支給品一式(食料1食分消費) 、虎竹刀 [思考] 基本:ひみつ道具と仲間を集めて仇を取る。ギガゾンビを何とかする 1:しんのすけとゲイナーを守る 2:ギガゾンビを見つけて捕まえる [備考] ※Fateの世界の魔術、リリカルなのはの世界の魔法――の知識があります 【ゲイナー・サンガ@OVERMAN キングゲイナー】 [状態]:疲労蓄積、風邪の初期症状、腹部と後頭部と顔面に打撲(処置済み) [装備]:AK-47カラシニコフ (弾数:30/30-予備弾薬×10発)、トウカの日本刀、コンバットナイフ [道具]:デイバッグと支給品一式(食料1食分消費)、技術手袋(使用回数:残り9回) スタングレネード×2、スパイセットの目玉と耳、クーガーのサングラス、エクソダス計画書 病院内で見つけた工具箱、解体された首輪、機械の部品多数、ノートPC(ユービック) [思考] 基本:バトルロワイアルからの脱出 1:トグサから送ってもらったデータを暗記 2:そのデータを他の仲間に伝える 3:次の通信を待つ 4:自分の身は自分で守る [備考] ※名簿と地図を暗記しています ※リリカルなのはの世界、攻殻機動隊の世界に関する様々な情報を有しています ※基礎的な工学知識を得ました 【住職ダマB(ユービック)】 [状態]:一応修復済み(下半身はつぎはぎ)、電脳通信可能、孔を増設、タチコマのメモリを挿しています [装備]:なし ※手の先から電撃を放てる [道具]:なし [思考]: 基本:グリフィスの仇を討つ。そのために参加者達に協力する 1:トグサと通信して、トグサの意をみんなに伝える 2:トグサから得た情報をゲイナーのPCに転送する 3:ギガゾンビを探す [備考] ※ギガゾンビの言葉(ツチダマはいつでも爆破できる)はハッタリかもと思っています 時系列順に読む Back 陽が落ちる(3)Next 陽が落ちる(5) 投下順に読む Back 陽が落ちる(3)Next 陽が落ちる(5) 293 陽が落ちる(3) 涼宮ハルヒ 293 陽が落ちる(5) 293 陽が落ちる(3) ドラえもん 293 陽が落ちる(5) 293 陽が落ちる(3) 野原しんのすけ 293 陽が落ちる(5) 293 陽が落ちる(3) フェイト・T・ハラオウン 293 陽が落ちる(5) 293 陽が落ちる(3) 遠坂凛 293 陽が落ちる(5) 293 陽が落ちる(3) レヴィ 293 陽が落ちる(5) 293 陽が落ちる(3) ロック 293 陽が落ちる(5) 293 陽が落ちる(3) トグサ 293 陽が落ちる(5) 293 陽が落ちる(3) ゲイナー・サンガ 293 陽が落ちる(5) 293 陽が落ちる(3) ゲイン・ビジョウ 293 陽が落ちる(5) 293 陽が落ちる(3) 住職ダマB(ユービック) 293 陽が落ちる(5) 293 陽が落ちる(3) ホテルダマ(フェムト) 293 陽が落ちる(5) 293 陽が落ちる(3) ギガゾンビ 293 陽が落ちる(5)
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零れ落ちるモノ ◆Ok1sMSayUQ 空には大きなお月様一つ。 幾度となく自分を見下ろしてきた月だ。最も気に入らないもののひとつだ。 見るだけで奴の存在を、蓬莱山輝夜のことを思い出すから。 この呪われた不死の身体を自覚するからだ。 人でありながら人と交わることを許されない、化け物の身体。 だからといって憎んでどうにでもなるものでもないし、これから先どうしたところで変わりはしないのだろう。 悟ったといえば聞こえはいいのかもしれないが、実際のところは諦めているだけだ。 出会いも、別れもしょうがないものだと断じて拘ることもしなくなった、感情のないひとがた。 人付き合いが苦手なのではなく、意味を見出せなくなった人形でしかない。 それでも、先程のように笑えたり出来るのは妙に人懐っこい人妖のお陰には違いない。 上白沢慧音。誰しも気味悪く思うはずの身体を、永遠不変を受け入れてくれた親友だ。 慧音と過ごした時間は不死を生きるようになった時間に比べればほんの僅かな間でしかない。 だが妹紅にとっては幾千、幾万の時を経たとて覚えていたい思い出の詰まっている時間。 茫漠とした価値しか持たない過去など取るに足らないくらい大切な時間だった。 いつか別れが訪れるのだとしても、それまでの間を、今を楽しく過ごせると思わせてくれた。 それが藤原妹紅にとっての、上白沢慧音に対する評価だった。 まあ、つまり、自分は……慧音を探してみようか、という気分だということだ。 自分は死にはしないが、慧音は命ある存在。致命傷を受ければ死んでしまう。 先程の化け猫少女のような可愛げのある妖怪ならまだしも、意地の悪い妖怪に絡まれれば怪我をするかもしれないし、危険だ。 ワーハクタクになっているならそれなりに強いが、人間の姿をとっている慧音はそこまで力を持たない。 保護……という言い方は彼女が怒るだろうから、合流してやったほうがいいだろう。 それに慧音は頭もいい。戦うことくらいしか能のない自分だが、慧音ならこの忌々しい首輪だって何とかする知恵を持つかもしれない。 ……ついでに、さっきの化け猫も見つけたら誤解を解いてやろう。 自分はどうでもいいが、自分のせいで慧音にまで迷惑をかけるのは心苦しい。 意外と友人思いらしい己の思考に妹紅は苦笑する。或いは自分のことを考えられないだけなのかもしれないが。 問題は、ここがどこで、慧音がどこにいるか、ということだった。 幻想郷に来てからというもの、迷いの竹林で生活の大半を過ごしてきた妹紅はイマイチ地理に疎かった。 最近は人間の里にもちょくちょく顔を出したりしていたものの、行動範囲は狭いものだった。 いま自分がいるここだってどういうところなのか全く分からない。地図と見比べてはみるものの目立つ街道があるわけでもなく。 全く、さっき引き止めておかなかったのは失敗だったわね、と妹紅は眉根を寄せて嘆息するしかなかった。 嘆いていても仕方ない。気の向くままに歩いてみて誰かと会ったら道を聞いてみようと考え、歩き出す。 くるくると手に持った水鉄砲を弄びながら、これは一体何だったかと思案する。 慧音だか誰かだかが言っていたが、世の中には筒から火薬を用いて鉛を高速で射出する武器があるという噂を聞いた。 幻想郷の外ではよく用いられている武器なのだという。だとするなら、これはその武器を模したものか。 威嚇交じりに化け猫少女が向けてきたのもそれが理由のはず。中身は水だったが。 周りを観察してみても特別な仕掛けは何ら見当たらない。 本当に精巧なだけの玩具らしいという結論に至った妹紅だったが、別に捨てる気は起こらなかった。 脅かすにはぴったりの代物だ。慧音に使ってみればさぞかし面白いだろう。 それに玩具で遊んだことはなかったから。 貴族の家に生まれたものの隠された存在であった妹紅は玩具で遊ぶ機会はなかったし、そもそも遊んだ記憶を持たない。 殺すでもなく、生かすでもなく、ただ忌避するように育てられただけ。 そういう意味では生まれたときから既に自分は不変の中にいたのかもしれない。 退屈しのぎにこの事件を解決したとして、少しは何かが変わるのだろうか。 慧音たちと元の時間を過ごすにしても己の内面は変化を起こすのだろうか。 呪われた身体を何も思うことなく、諦めきった自分が変われるのか―― 水鉄砲を見ながら物思いに耽っていたせいか、妹紅は足元への注意を怠っていた。 よく気を配っていれば分かる、拳より少々大きな岩。足を取られ、妹紅は派手にこけた。 「いたたた……もう、不死の身体なのにどうして痛覚は残っているのかしら……」 咄嗟に腕で庇ったので肘や手のあたりを擦りむいただけで済んだが、ひりひりとした痛みが残っている。 まあいい。どうせこの程度の傷、ものの数秒もあれば治るはず…… 「……あれ?」 だった。普段なら塞がっているはずの傷は未だ痛みを残し、傷口は治るどころかじんわりと血の色を広げていた。 妖力の行使に好調不調の差はあるけれども、再生能力は変わらず、こんなに傷の治りが遅いなんてことは一度もなかった。 不死は体質のはず。制限がどうこう言っていた永琳もこればかりは手の出しようがないはずのものなのに。 不死を治す薬でも開発したというのか? そんな馬鹿なと思う一方、僅かに溢れ出した血が手を伝い細い川を作った。 ぽたりと落ちる赤い雫を見て、妹紅は思った。 「私は……死ねるの?」 ふと口に出した言葉が、あまりにも恐ろしいもののように思ってしまう。 まだ分からない。手首でも切れば死ねるかどうかは証明されるだろう。だがもし死ねるのだとしたら、妹紅の命はそれまでだ。 それは命を賭けるということ。今まで経験したこともない、無と有の狭間。 自分は、そこに放り込まれたのだ。 今までの自分があっけなく崩れる感覚。千年以上も感じてこなかった生の感覚が内奥を巡り、息苦しくなる。 ぽたり。 ぽたり。 雫は垂れ続けている。 ぽたり。 ぽたり。 藤原妹紅の瞳は揺れている。 ぽたり。 ぽたり。 彼女には何も分からなかった。 己が生きたいのか、死にたいのかさえ―― ぽたり。 ぽたり。 流れ落ちるは、彼女の命。 生まれ、そして死んでゆく、命だった。 【B-4・西部 一日目・黎明】 【藤原 妹紅】 [状態]健康 [装備]水鉄砲(元は橙の支給品です) [道具]基本支給品、ランダム支給品1~3個(未確認) [思考・状況]基本方針:ゲームの破壊及び主催者を懲らしめる 1.自分が不老不死の力を失っているのかと疑いを持つ。 2.自分からは襲わないが、相手がその気なら殺す。 3.慧音を探す。 4.少女の誤解を解く。 5.首輪を外せる者を探す。 ※黒幕の存在を少しだけ疑っています。 ※再生能力は弱体化しています 30 嘘と真実の境界 時系列順 33 おてんば恋娘とフュージョンしましょ? 31 灰汁の垂れ滓も空目遣い 投下順 33 おてんば恋娘とフュージョンしましょ? 10 玩具箱の銃 藤原妹紅 53 死より得るもの/Necrologia
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毎年、近所で花火大会が開かれる。 私には興味がなかった、今年までは。 「だ・け・ど☆㍍⊃!目も合わせられな~い♪」 遠くから聞こえる祭囃子。それに上書きするように、特徴的な声が聞こえる。声は旋律に乗っていた。歌だ。 自分の前を歩く小柄な後姿が声の主。 「こなちゃん、いい歌だね」 小柄な背中の隣、リボンをつけた浴衣の後ろ姿が話しかける。柊つかさ―――私の通う高校の先輩。 「うん、メルト、って曲だよ。初音ミクの」 小柄な背中―――泉先輩が答える。 長い髪に眠たげな目と猫のような口。 一見して年下にしか見えないけれど、この人もセンパイ。そして…… 「最近、他にもいろいろ歌ってるよね、お姉ちゃん」 そして小早川ゆたか―――私、岩崎みなみの大切な親友の従姉。 ~恋に落ちる音~ 「なんだ?またアニソンか何かか?」 そう言うのは柊かがみ先輩。つかさ先輩の双子の姉。 私の周りには他に人がいる。 高校に入ってから出来た友達のパティさんに田村さん。それからご近所のみゆきさん。 私も含めて合計八人。 「違うのだよ、かがみん。初音ミクっていうのは科学の限界を超えてやってきたVocaloidなのだよ!」 「何よそのボーカロイドってのは?」 「DTMのソフトっすよ!もう大ブレーク中っす!」 「ソーデース!ニコ厨皆、ネギでミックミクデース!」 「ネギ?DTM?みっくみく?」 「ますます分からん。っていうかそもそもDTMってなによ?」 「そ、そりゃ、えっと…」 「デスクトップミュージックのことですね。 VocaloidとはYAMAHAが発売した、人の声を合成して歌わせることができるソフトのことです。 初音ミクとはVocaloid2の音源「キャラクター・ボーカル・シリーズ」のイメージキャラクター、第一弾です」 「おおう!さすがみwikiさん!」 途切れることなく、自然と回っていく会話。 学校行事でもないのに、こんな大人数で歩くのは、これが初めかもしれない。 楽しい。 「あの、みなみちゃん?」 不意に、つかさ先輩上目づかいに声を掛けてきた。少しためらうように 「ひょっとして…うるさいの苦手だったかな?」 え? 「さっきからずっと静かだし…だとしたらごめんね?なんか騒がしくなっちゃって」 「ぁ、そ、その…」 違う。そう言おうとして、けれど私の舌は動かない。 失礼にならないように、けれど畏まり過ぎないように…。 言葉を探して焦れば焦るほど、言葉は逃げていく。 ああ、センパイも気まずそうにしている。 きっとこの無言を肯定と受け取られてしまう。 「いいえ、みなみちゃんは嬉しそうですよ」 隣から、柔らかい声がした。 ゆたかだった。つかさ先輩は首をかしげる。 「そう?けど私たちだけしか話してなくて…」 心配そうなつかさ先輩に、ゆたかはいつものタンポポみたいな柔らかい頬笑みを返す。 「みなみちゃんはちょっと照れ屋さんでおしゃべりが苦手だから…。 あ、けれど好きなんですよ、おしゃべりとか、みんなで一緒にいるのとか。 さっきからずっと嬉しそうでしたし、ね?」 水を向けられて私は、頷いた。 ゆたかの言っていたことは、私の思っていたこと、言いたいと思っていたことそのままだったから。 まるで、私の心を読んでいるみたいだ。 「そうなの?よかったぁ」 つかさ先輩はほっとしたように笑うと、再び会話の輪の中に戻って行った。 「……ありがとう」 少しして、私はゆたかに言った。けれど返ってきたのは不思議そうな表情。 「え?何が?」 「さっき……助けてくれて」 「そんなの!当然だよ」 気負った風もなく言うゆたか。 大したことがない、本当にそう思っているのだろう。 けれど、私にとっては何よりも有り難く、嬉しいことだった。 口下手で、感情を表すのが苦手な私を、誰よりも理解して、一緒にいてくれるゆたか。 傍から見れば、ゆたかが私を頼り、わたしがゆたかを支えているように見えるかもしれない。 けれど本当は逆。 ゆたかがいなければ田村さんやパティさんと友達になれなかっただろうし、泉先輩達ともこうして一緒にいられなかっただろう。 頼ってるのはむしろ私の… 「ねえ、みなみちゃん!」 「えっ、は、はい!」 突然、泉先輩の顔が目の前に現れた。 いや、私が単にぼーっとしていただけかもしれないけれど。 目を白黒させる私に、泉先輩はさらに混乱させるようなことを聞いてきた。 「男のツンデレも萌えるよね!?」 「?」 ツンデレ?萌える? 「あんたねえ!いきなりそんなこと聞いてもみなみちゃんが困るだけでしょ!」 かがみ先輩が言うとおり、私は困っていた、心から。ただでさえ話を聞いてなかったのに、その上、萌えるかとか言われても…。 一方の泉先輩は不服そうに、 「や、ほら、一般人の意見を聞きたくてさ」 「私の意見は一般人も意見じゃないのか!」 「ラノベ読むじゃん」 「だからってオタクとは限らんだろう! 大体雨の時に女の子に対して『しょうがないから入ってやる』とかいう男のどこがいいってのよ?」 話を聞いて、大体の内容が分かってきた。 泉先輩が歌っていた『メルト』という歌の中に、雨の日に折り畳み傘を持って憂鬱にしている歌い手(女の子)の隣に立った男の子が 『しょうがないから一緒に入ってやる』という下りがあった。 そう言うシーンから、そんな感じにいう男の子をどう思うか、というのを泉先輩は聞きたかったらしい。 「もう!かがみったら自分はツンデレのくせに男のツンデレの機微は読めないんだから」 「ツンデレ言うな!」 「私はちょっと憧れるかな、そういうの」 「つかさ、あんた悪い男に引っ掛かりそうね」 「あうっ」 「いや、そこは男子の反応によりますよ! 耳まで真っ赤か自信満々かで好みが分かれるっすね」 話題は既に私の手から移っていた。戻ってくる気配もない。 ほっとしたけど、少し残念。 「みなみちゃん」 「?」 ゆたかが声を掛けてきた。無言で問い返すとゆたかは 「みなみちゃんは、そういう男の子のこと、どう思う」 …やっぱり、ゆたかは私の心が読めているんじゃないだろうか? 私は、ゆたかの掛けてくれた話題に答えようとして… 「…ごめん、よくわからない」 情けない。せっかくゆたかが話しかけてきてくれたのに…。 けれど、そんな中途半端な面白味もない答えに、ゆたかは笑顔を見せてくれて 「よかった。私も男の子のことよくわからなくて…」 はにかむような笑った。 花火大会の会場は、もうすぐだった。 30分後、私達は花火がよく見える河原から、少し離れた公園にいた。 「ごめんね、みなみちゃん」 「ううん」 ベンチの上に座った私は、ゆたかに膝枕をしている。 人ごみで、ゆたかが体調を悪くしてしまったのだ。 この公園は立地の関係で花火が殆んど見えず、人がいない。 私とゆたかはここで待つことにした。 泉先輩達は自分たちも残ると言ったし、ゆたかは私も行けと言っていたが、私は残った。 花火大会を楽しみにしていた泉先輩に申し訳ないし、ゆたかを一人にしておけないし、それに――― 花火大会が、始まった。 音だけが届く。 「あ…始まっちゃった…」 ゆたかが、悲しそうな声を出す。 私も残念に思う。ゆたかにも見せてあげたかった。 そう思っている間にも、花火は次々と打ち上げられていく。 どーん、どーんと。 爆発音と言うには丸い響きの音。けれども小さくないそれは、震動として体に直接感じる。 胎児が感じる母親の心音は、こんな感じなのだろうか? 「みなみちゃん…ごめん」 しばらくしてからもう一度、ゆたかが言った。 声が少し湿っていた。心配になる。 「ゆたか…?」 「私がこんな体だから……ごめんね、迷惑を掛けて…」 ゆたかが、泣いている。 違うのに。謝る必要なんてないのに。 どうして、こんな時にゆたかは私の心を読んでくれないのだろう? いや、そんなことを思っていては駄目だ。 いつも私を支えてくれるゆたかが泣いている。守ってくれるゆたかが悲しんでいる。 だから、今は私の番。 「あのね…?」 緊張でもつれそうになる舌を動かしながら、必死に言葉を探しながら、 「私…いつもはこの花火大会、見に来ないの」 たどたどしく、私は想いを紡ぐ。 「今年来たのは……ゆたかが一緒に行くからだったから…」 「みなみちゃん?」 少し驚いたように、ゆたかが私の顔を見てきた。 恥ずかしいと思って、けれど目は逸らさない。 「ゆたかと一緒だから、花火を見たいと思った。一緒じゃなければ、全然意味がないから…。 だから……私は、今、こうしている、幸せだよ?」 言い切った。 私の心は伝わっただろうか。 考えている間に花火大会が終わったのか、花火の音は聞こえなくなっていた。 私は不安になりながらゆたかの返事を待つ。 ゆたかは、最初驚いたような表情をこちらに向けていたけれど、やがてその顔がゆるんだ。笑顔の形に。 そして眼尻に浮かんでいた涙をそっとぬぐって、 「ありがとう、みなみちゃん…。大好きだよ」 花火の音がした。 聞こえたような気がした。けれど、それは気のせい。 花火大会は終わって、聞こえてくるのは喧騒と虫の声だけ。 けれども音は聞こえる。 体を揺らす振動とともに、音が聞こえる。 鼓動の音だ。 そう気付いたのはしばらくしてからだった。 気づけなかったのは、その鼓動の音があまりにも大きかったから。そして、あまりにも優しかったから。 来る途中、出店で買ったラムネ。 わずかな炭酸の淡い痺れと、優しい甘さ。 この音も同じ。 大きく響いて体を痺れさせるくせに、乱暴じゃない。 ああ、そうか。この音に心当たりがあった。 それは来る途中。泉先輩が歌っていた歌のワンフレーズ。 恋に落ちる音 ああ、きっと実らない恋なんだろうな。 ああ、きっと叶わない恋なんだろうな。 私の恋に落ちる音。初めて恋に落ちた音。それは花火の音だった。 一瞬だけ咲いて、すぐに散る、実を結ばない儚い花。 けれど、今は、せめてこの音がまだ体の中に残っている間だけは、そんな現実を忘れておこう。 「私も大好きだよ、ゆたか」 すれ違うLikeとLove。けれど、今だけは伝わってると信じる。 遠くから、泉先輩の声がする。 ゆたかは慌てて膝枕をやめようとするけど、私はそっと押しとどめる。 もう少しだけ…もう少しだけこの余韻を楽しませて。私が恋に落ちた音の…。 【完】 コメントフォーム 名前 コメント 凄く良い作品!さわやかな気分! -- チャムチロ (2012-09-12 22 48 27) このタイプの話、もっとほしい・・・。ぜひまたみなゆたをー! -- 名無しさん (2008-09-24 23 47 19) 成就を〜〜二人の気持ちが結ばれるハッピーでラブラブな恋愛成就の続きをプリ〜〜〜〜ズ!!!! -- 名無しさん (2008-08-25 18 51 46) みな→ゆたは切ない…。 -- アペックス (2007-12-29 20 20 41)
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韓国面に落ちる 他人の描いた絵を何らかの形で妨害する事に喜びを感じ、 それをスレッド内で発言した場合に言われる台詞。 韓国人が韓国旗で綺麗な絵を次々と妨害する、 その行為が元になって生まれた言葉。 「ぬるぽ → ガッ」の様に使われ、あまり深刻な場面では使われない。 ハン板などでは、韓国政府や国民(個人)の言動と同じ行為を行う人物に対し 「韓国面に落ちたな」等と囁かれる。 「韓国面」とは、映画「STAR WARS」でのダークサイド(暗黒面)からの造語。 ハッキリ言って良い意味では無い。 初出 (【モナリザ】 NO WAR 【PEPSI】スレより引用) 926 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/03/09(木) 21 29 28 ID Z/5CV9zB0 同意 そんなことしてたら韓国面に落ちる 928 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/03/09(木) 21 38 40 ID THRPTArc0 919 韓国面に落ちたな
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陽が落ちる(2) ◆S8pgx99zVs 【18:24】 「終着に向けて!」 レントゲン室より離れたトグサは、あの部屋よりいくつか通路を隔てた場所にあるリネン室の中にいた。 薄暗く狭い部屋の中、床に腰を下ろし作業に没頭している。 彼の傍らにはノートPC、そして目の前にはツチダマの中の反逆者――ユービックがいる。 ”……どうだ?” ”問題はない” 繋がった電脳通信に互いが満足し頷く。 トグサの手には技術手袋が嵌っており、ユービックにはそれまでになかった孔とスロットが増設されていた。 二人はトグサのうなじから伸びた線により結線されている。 ”よし。じゃあ、作業に入る。もう少しだけ協力してくれ” トグサは技術手袋を床の上に置くとノートPCへと向き直った。 そこには先程の喜緑江美里との対話とは別に、もう一つのウィンドウが開いている。 そこに表示されているログは、レントゲン室で交わされた――本当の会話の内容だ。 いかにしてギガゾンビの裏をかくか、どうやって首輪をはずすのか、またその他の問題をいかにしてクリアするか。 短い時間しかなかったが、彼らは話し合った。エクソダス計画を立てたあの時のように、再び。 そして、それぞれに課せられた仕事をするために動き出したのだ。 彼らのうちの誰かが「もう、終わりだ……」と呟いた。 そう。彼らはもうこれを終わらせるつもりだ。――自らの勝利をもって。 今まで生き残った十人。 ――涼宮ハルヒ、ドラえもん、フェイト、遠坂凛、野原しんのすけ、ロック、レヴィ、トグサ、ゲイナー、ゲイン。 何故ここにいるのか。どうやって生き残ったのか。何を失い、何を得て、この先何を求めるのか。 それは、それぞれに、言葉通り十人十色に違う。何もかもが、ありとあらゆるものに違いがある十人だ。 しかし、それでも共通項を見つけるならば――、 それは――屈しないということだ。 家族や仲間、想い人……、それらを失った時、または戦いに傷ついた時。もう何度も膝を折ってきた。 この熾烈な二日足らずの間に、一度ならず彼らは屈した。だからこそ――、 だからこそ。彼らはもう屈しないのだ。 力及ばないことがあるかもしれない。でもそれでももう屈しはしない。 彼ら十人にはそれぞれに背負ったものがある。または、背中の後ろに置いて来たものがある。 それらのために進む。前へと進むだけだ。ただ全力で。それぞれの十人が。 (ギガゾンビとその僕。リインフォースと闇の書。TPに情報統合思念体。――そして俺達。 最も優秀なスタンドプレーを演じられた者が、この事件の勝敗を左右しそうだな。 そして、まずは俺だ――) トグサは静かに両眼を閉じると、未知の23世紀の電子の海へと飛び込んだ――。 【18:25】 「魔力と魔力と魔力と魔力……?」 「これが、水銀燈のローザミスティカ……?」 遠坂凛とフェイト、涼宮ハルヒの三人の少女はレントゲン室から離れずその場に留まっていた。 後の二人は動きたくても身体の不調がそれを許さなかったからだが、遠坂凛は違う。 この後に予定されている闇の書との一戦に向けて、そこに集められていた支給品の中から 使えるものがないかを探しているのだ。 今、遠坂凛の手の上には一つの光を纏った宝石が乗せられている。そして傍らには同じ物がさらに二つ。 最初の一つは、フェイトが水銀燈の亡骸から直接発見した物。 後の二つはゲインが集めた荷物の中に紛れていたものだ。 荷物の中に別の人形の亡骸があったことから、おそらくそれはその人形の物だったろうとも推測できた。 「……どうですか凛さん。魔力としては十分なものだと思うのですが、使えそうですか?」 ベッドの上からのフェイトの問いに、遠坂凛はふぅむと唸る。 それが極めて大きな魔力を持っているのは分かる。問題はそこに込められた魔力が使えるかだが……。 遠坂凛の世界の魔力。フェイトの世界の魔力。若干の違いはあったものの、それは許容範囲内であった。 それは魔力の操作に長けた遠坂凛だったからこそとも言える。 して、水銀燈の世界の魔力――ローザミスティカはどうだろうか? 魔力の性質としては一番異質だと思える。遠坂凛が水銀燈から聞いている情報からだと、 ローザミスティカは単純な魔力の塊ではなく――各薔薇乙女のためにカスタマイズされたもので、 それぞれに固有の能力が与えられ、また統合することでその能力を併用できるようにもなるという。 そして、薔薇乙女は契約者より魔力を得る。 つまり、ローザミスティカはエネルギーと言うよりも、データという側面が強い。しかも専用のコード付きのだ。 「……体内に取り込めば、それなりに魔力として働くとは思うけど。 それがどれくらいの量になるか、そしてデバイスに通るかは、やってみないとなんとも言えないわ。 彼女達が有していた固有の能力については期待しないほうがいいと思う」 そういう慎重な判断を遠坂凛は下した。 感触としては、ゼロの状態から一気に全快の状態まで回復しても余りある量が期待できるが、過信は禁物だ。 「そう言えば、コレもどうにかならないかって思っていたのよね」 そう言いながら遠坂凛が自分の鞄から取り出したのは、石化した劉鳳の腕だ。 「リインフォースは同じアルター使いなら……って言ったんだけど」 残念ながら、その同じアルター使いであるカズマは先程の放送で名前を呼ばれてしまった。 初見であったフェイトはそれが何かを尋ねるが、遠坂凛の答えを聞くと目を丸くして絶句した。 「あ、いや。……まぁ、彼には悪いと思ったんだけど、その、カートリッジもないしね」 改めて考えても非常識なことだが、今は藁にも縋りたい状態である。使えるものは使うのが遠坂凛の信条だ。 とは言え、彼女の手にも余る物でもあるのだが……。 「……起爆式を仕込んで、いや、……直接。……駄目かな」 遠坂凛を見るフェイトの顔色は、その容態のせいか心なしか青い。 石化しているとはいえ、人の腕を手に独り言を呟くのだからやはり他から見れば不気味だ。 ふむ……と、溜息をつくと遠坂凛は手にしていた劉鳳の腕を鞄に仕舞い込んだ。 彼女が考えていたのは、魔力にできないのなら、いっそ直接爆弾とすることはできないかということだ。 その発想は、彼女がよく知る紅衣の男が得意とする「壊れた幻想」からのものである。 劉鳳の腕に起爆式を仕込み、魔力の連鎖的な解放により爆弾とする。それは可能かと言うことなのだが……、 そもそも劉鳳の腕に閉じ込められた力――それを遠坂凛はよく解っていない。 爆薬の正体が判らなければ、挿すべき信管の種類もまた判らないということになる。 と、言うことで遠坂凛は劉鳳の腕に対する処置を保留にした。破棄しないのはやはりもったいないからだ。 そして、今度はレントゲン室の片隅、邪魔にならない位置に集められている支給品へと手を出した。 それから一分も経たない内に、狭い室内に凛の大声が響き渡った。 横になってまどろんでいたフェイトとハルヒも、その声に何がと慌てて身体を起こす。 「……こ、こんなものがあったんなら、誰か教えてくれてもよかったのに」 遠坂凛が支給品の山から見つけ出したのは、予備弾薬セット。 そして、その中に混ざっていた四十発もの魔力の篭ったカートリッジだった。 【18:27】 「潜行」 トグサがダイブして、まず最初に辿り着いたのは、あのツチダマ掲示板が置かれていたサーバだ。 テキスト形式の掲示板と、僅かな管理システムだけが置かれていただけのサーバ。 どれほどの物かと思っていたが――、 ”とんでもない容量だな……。さすがに二世紀以上も先だと、常識が通用しない” ダイブしたトグサの目の前にあるのは、視覚化された大容量の、それも九課の電脳システムを まるごと展開したとしてもそれが数十は入るであろう、広大な電子の箱だった。 ”だが、都合がいい” トグサは早速、自らに課せられた仕事に取り掛かる。 彼に課せられた仕事は、メインコンピュータに侵入してデータベースから首輪に関する情報を抜き出す――ではない。 それではもう間に合わない。なので、難度が跳ね上がるがより短時間で済み、また効果的な方法を取る事になった。 首輪のシステムの根幹を成すもの、それは電波だ。ゲイナーや他の検証によりそれは判明している。 今までのやり方は、それを首輪の側から解決するというものだった。そして、新しい方法はその逆。 つまり、操作する権利を持つギガゾンビ側のシステムを――落とす。少なくとも通信システムを……ということである。 ”再起動完了~♪ ……って、トグサ君じゃないかぁ” ユービックに差し込まれた、タチコマのバックアップメモリからのデータ転送が終了し、そこにタチコマのAIが現れた。 さらにトグサからのコマンドによってタチコマは複製され、その声が電子の世界にリフレインする。 一瞬にして領域内に数十機のタチコマが現れ、それらはトグサの号令の下に幾何学模様の陣を組んだ。 ”トグサ君、おひさしぶり~♪” ”ここはどこぉ? もしかして天国だったり” ”広~い。けどなんにもないねぇ” ”死んだ後も仕事だんなてAI使いが荒いなぁ” ”タチコマは滅びぬ! 何度でも蘇るサ!” ”ところでフェイトちゃんは~?” ”あ、そうだ。フェイトちゃん” ”ボクも気になる” ”どうなったんだろう?” あっと言う間に空間内がフェイトちゃんコールに満たされた。 相変わらずなところにトグサは苦笑するが、仕事に関しては任せられる連中だ。 フェイトの無事と、後三十分で仕事を終えないと、彼女と残った全員が死ぬことを教えてタチコマ達を震えさせると、 トグサはタチコマ達にコマンドを送ってそれぞれに仕事を宛がった。 トグサの命令が届くと、たちまちタチコマ達は電子の海に散らばった。 まずは、サーバの中にハッキングに必要なシステムが組まれ始めた。言うならばこれは橋頭堡だ。 トグサの電脳にも例のノートPCにも、スペックと容量の両面から見て、これから行われるハッキングには力不足だ。 なので、初手として本格的な侵攻を行うための礎が、サーバの中に電子の砦として築き上げられていく。 ”ここと同様のシステムを他にも発見しました~。数は6。生きているのは3です” 斥候の役割を課していたタチコマ達が戻ってくる。 ――数は6。 おそらくは、このサーバの本来の使用目的は亜空間破壊装置の制御、観測なのであろう。 そうトグサは推測した。そうでなければ、こういったコンピュータを別途用意している理由が説明できない。 攻めるにあたり砦の数は多いに越したことはない。トグサは戻ってきたタチコマに再び命令を与えた。 ”一台は独立解析機。もう一台はおとりに使う。多層防壁迷路を組んでデコイアレイを展開しろ” らじゃ~♪ とおどけた返事をしてタチコマ達は再び散開する。 時間は少ない。そして敵の能力は未知数。その上でトグサが選んだ戦略は奇襲だ。 選んだというよりはそれ以外に方法がなかったとも言える。 時間が無く、敵の実力が未知数である以上最大戦力による一撃――これに賭けるしかなかった。言い換えればカミカゼだ。 ”ウィルスアレイ及び、システムデータ、その他全データの展開終了しました” 同サーバ内で作業を行っていたタチコマから報告が入る。 宛がっていた仕事は、長門有希が人知れず用意していたデータの解凍作業だ。 ”展開が終了したら各データを解析。用途別にリスト化して、各所に配分。更新できるものはそうさせろ” は~い♪ と声を合わせて返すとタチコマ達は早速新しい作業に取り掛かる。 長門有希が用意したのは城を落とすための武器だ。それによって、トグサ達は武装する。 それらは、彼等が知るものより遥かに高度な技術によって組み上げられているのだったが、 九課へと宛先があったとおり、トグサ達が使うシステムに適合させられてあり、使用には問題なかった。 ”コレ見て見て♪” ”構造解析~♪ 構造解析~♪” ”うわ~、こんなのありえないね” まるで新しい玩具を与えてもらった子供のようにタチコマ達がはしゃぐ。 21世紀の技術レベルから見れば、与えられた物はまさに超兵器だ。はしゃぐのも無理はない。 こうして、トグサの仕事――ギガゾンビ城への電脳を介した侵攻は動き出した。 【18:39】 「兵共が夢の跡――出立」 トグサが今の道へと至る出発点となったのが此処だった。 セラスと出会い、一時は拳を交わしまた共に戦ったのが此処だった。 獅堂光が、ガッツが、クーガーが、高町なのはが、キャスカが、さらに幾人も、幾人も、幾人もが此処に辿り着いた。 ある者は通り過ぎ、またある者は戦い、そしてまたある者は此処で死んだ。 野原みさえが死んだのも此処だった。 ――そして、ゲイン・ビジョウがエクソダスの、その最初の一歩を踏み出したのが此処だった。 ゲイン・ビジョウは灰色の中に立っている。 彼が最初に此処を訪れた時、此処には地味ではあるが気品を感じさせる彩があった。 だが、今は灰色だ。簡単には語りつくせぬほど色々なことが此処であったが、やはりもう灰一色だ。 本当に様々なことがあったのだ。ならば、此処の風景はもっと雄弁でもいい。そう思っても、そこは残酷なほど灰色だった。 ――唯一点、灰色でない場所がある。 ゲインの目の前、すでに命を――生命の彩を失った者達が眠る墓。そこだけは灰がよけられ赤い地面をあらわにしている。 ゲイン・ビジョウ、ロック、そして野原しんのすけの三人は、最初はホテルが建っていたその跡地にいる。 目的はトグサが交信した相手――喜緑江美里が求めた条件の一つであるTFEI端末、つまりは長門有希の遺体の回収だった。 もう一人のTFEI端末である、朝倉涼子がどこで死んだのかは誰も知らなかったので、必然的にこちらが選択されることになった。 そしてそれはもう成されている。ゲインの目の前にある墓の一つは暴かれ、空虚な穴を晒していた。 彼女の遺体は、病院から乗って来た救急車の中だ。そしてその運転席にはロックがいた。 残りの一人、野原しんのすけはゲインの隣、野原みさえ――母親の墓の前に立っている。 ゲインはそれを見て想う。野原みさえを――彼の依頼人を。彼にエクソダスと息子の命を託した母親を。 彼女を埋葬してくれたのは、今は亡きキョン、トウカ、園崎魅音の三人だという。 救うことが出来なかった三人。彼らが倒れた場所には、未だ野ざらしのままの者もいる。 ならば、今度は自分達が彼らを弔うのが道理だろう。 今はまだできないが……、全てが終われば必ずそうしよう。そう、ゲインはそれを固く心の中で誓った。 しんのすけの前にあるのは、赤い土を盛った小さな山だ。 この下に自分の母親が眠っているとしんのすけは聞かされた。ゲインが言ったのだから本当だ。 目の前にかーちゃんがいる。そのかーちゃんに向かい、しんのすけは一人語りかけ始めた。 「……オラ、オラもう、お寝坊はしないゾ。朝ごはんだって残さないし、お片付けだってする。 おやつも食べすぎたりしないし、TVもがまんする。毎日、ちゃんと歯みがきをして寝る。 幼稚園にも毎朝バスに乗って行くし、ひまわりの面倒だって忘れない。 おりこうにするし、シロの世話だって絶対忘れない。 ……いっぱい、食べて、勉強して、イイ学校に行って、……とーちゃんみたいなとーちゃんよりすごい男になる! ひまわりだって、かーちゃんみたいなかーちゃん以上のイイ女になる! だから……、だから! かーちゃんは心配しなくていいゾ! 全然心配しなくてイイ! オラも、ひまわりも……大丈夫、だから。心配しなくても大丈夫だからっ! だから、かーちゃんは、……そこで、寝ててもいいゾ。 オラ……、もう……、かーちゃんに面倒、見てもらわなくても……大丈夫だから。 だから、ずっと、そこで寝ててもいい……」 赤色の地面にポタリ、ポタリと雫が落ちた。ポタリ、ポタリととめどなく落ちた。大粒の雫がいくつも落ちた。 肩が、膝が、握り締めた拳が、噛み締めた歯が、なにより心が震えていた。でも、我慢した。 ――しんのすけは男の子だから。 「オラ……、お仕事が、あるから……、もう行くゾ。 みんなで、しなくちゃならないことがあるから……。 遅くなるかもだけど、帰ってくるから。 絶対! 絶対! 絶対! 絶対! 帰ってくるからっ!」 だから……、だから……、 「 ――行ってきます 」 【18:36】 「雪、無音、窓辺にて。」 広大な電脳の海の中、一人トグサはそこに漂っていた。 その眼下にあるのは、巨大な電子の城だ。 円形に配置されたデータを、さらに円環状に並べた電子の曼荼羅図。 さらにその曼荼羅が積み重なり、うねりを持った螺旋を描いて巨大な電子の塔となっている。 そして、高さの異なる電子の塔が幾重にも並び立つ異形――それがギガゾンビの城だった。 ”全くデタラメだな。デカトンケイル級をも遥かに超えているじゃないか” トグサは一人ごちる。 彼我の戦力差は比べるべくもない。だが、だからと言って諦めるわけにもいかなかった。 攻城戦は戦力差だけが全てではない。いかに開城させるかの勝負だ。開きさえすれば攻める方が有利になる。 ギガゾンビの城に繋がる三つのサーバ。そこから城に向けて何かが送られていた。 未だ生きている、亜空間破壊装置の状態情報を取得するための監視システム。 そこに、その情報に偽装した結合型ウィルスをタチコマ達が今せっせと流している。 ”進捗は?” ”現在89%まで送信完了しています。終了までは後72秒かかる予定となってます” ”完了するまで気取られるなよ。隠密性を優先だ” ”らじゃ♪” トグサの中に緊張が高まる。後一分ほどで戦争が始まり、それは十数分後には決着しているだろう。 勝てば、彼らは首輪の呪縛から解放される。逆に負ければ、その場で全員が命を失うだろう。双肩にかかった責任は重い。 ”タチコマ#036から#059までは、俺の電脳防壁設定が正しく機能しているかを常に検証” ”了解しました。120毎秒回数でチェックします” ”タチコマ#60から#156までは、ハッキングが始まったらレベル6でこちら側の走査と記録を開始。 時限式、結合式のウィルスを含んだ文字列が書き込まれていないか監視しろ” ”アイサー。全タチコマ、一丸となって取り組みま~す” ”対逆探知措置、対迎撃措置スタンバイ” ”もうやってる。……今のイシカワさんの真似ですけど、似てました?” ウィルスを送信しているタチコマから連絡が入る。――送信完了まで、後10秒、……9秒、……8秒、……、 ”まずはデコイを先行させるぞ。相手の攻性防壁には気をつけろ” ”は~い♪” 電脳空間中のトグサの周辺に、姿を隠していた無数のタチコマが姿を現す。その数――六千騎。 残り……7秒、……6秒、……5秒、……4秒。 ……3秒、……2秒。 ……1秒。 ”送信完了しました。起動します” 長門有希が用意した一種のウィルスが、ギガゾンビの城の中で結合し起動する。 その様は、電脳内での現象を視覚化しているトグサに、ある自然現象を思い起こさせた。 それは―― ”……雪?” トグサの目の前。音も、星の光もない、電脳の真っ暗な空。そこに、淡く白い雪が降っていた。 時系列順に読む Back 陽が落ちる(1)Next 陽が落ちる(3) 投下順に読む Back 陽が落ちる(1)Next 陽が落ちる(3) 293 陽が落ちる(1) 涼宮ハルヒ 293 陽が落ちる(3) 293 陽が落ちる(1) ドラえもん 293 陽が落ちる(3) 293 陽が落ちる(1) 野原しんのすけ 293 陽が落ちる(3) 293 陽が落ちる(1) フェイト・T・ハラオウン 293 陽が落ちる(3) 293 陽が落ちる(1) 遠坂凛 293 陽が落ちる(3) 293 陽が落ちる(1) レヴィ 293 陽が落ちる(3) 293 陽が落ちる(1) ロック 293 陽が落ちる(3) 293 陽が落ちる(1) トグサ 293 陽が落ちる(3) 293 陽が落ちる(1) ゲイナー・サンガ 293 陽が落ちる(3) 293 陽が落ちる(1) ゲイン・ビジョウ 293 陽が落ちる(3) 293 陽が落ちる(1) 住職ダマB(ユービック) 293 陽が落ちる(3) 293 陽が落ちる(1) ホテルダマ(フェムト) 293 陽が落ちる(3) 293 陽が落ちる(1) ギガゾンビ 293 陽が落ちる(3)
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【検索用 しこくにおちる 登録タグ CeVIO し カンザキイオリ ニコニコ外公開曲 友達募集P 可不 曲 曲さ】 + 目次 目次 曲紹介 歌詞 コメント 作詞:カンザキイオリ 作曲:カンザキイオリ 編曲:カンザキイオリ マスタリング:友達募集P 唄:可不 曲紹介 スキップしたくなる地獄を。 曲名:『地獄に落ちる』(じごくにおちる) 2nd Album「不器用な男」収録曲の可不歌唱版。 歌詞 (PIAPROより転載) こぼれ落ちたものばかりだ ペットはコンビニに捨てた 仲間も全て切り捨てた 幸せになれるはずがないのさ ゴミの分別だとか 明るい挨拶とか 悪者なんだから全部が無駄なのさ 言葉より単純な方法で 今すぐ地獄に落としてくれよ サヨナラはあんたも知っている 笑ってくれよ 笑ってくれよ 今すぐに 腐り落ちたものばかりだ 金がなけりゃスリをした 都合が悪けりゃ無視をした 将来ずっとゴミクソだ だってそうだこの瞬間 誰かを殺してみたいんだ なあなんでこんな俺みたいな 奴が生きてんだよ もっと価値あるやつのための 命ってもんじゃないのかい そうだろう? 苦しくてぶっ刺した傷口が 化膿してどうしょうもなく尊い 傷つけた分だけ傷つけた自分が 今もかなりしぶとい 蠅のように なあ今年もさ 桜が散ってしまうんだ 夢みたいに踊る桃色に 騙されてしまいそうだ このまま全部シワになってしまうよ 神様もしかしてそういう拷問なのかい? サヨナラを知っている俺たちは 今でも愛を忘れられない 言葉より単純な方法で殺してくれよ 笑ってくれよ 温もりを知ってしまう前に 今すぐ地獄に落としてくれよ ここでのうのうと笑っている 俺を地獄に落としてくれよ 笑ってくれよ 騙してくれよ 気付いてくれよ 幸せなんてとうの昔に青さと消えた 笑ってくれよ 許してくれよ 今すぐに コメント 訴えかけるような歌詞と無理に笑っているような音楽が好きです。 -- Ʀだんだんでぃだん (2023-11-15 12 01 09) 名前 コメント コメントを書き込む際の注意 コメント欄は匿名で使用できる性質上、荒れやすいので、 以下の条件に該当するようなコメントは削除されることがあります。 コメントする際は、絶対に目を通してください。 暴力的、または卑猥な表現・差別用語(Wiki利用者に著しく不快感を与えるような表現) 特定の個人・団体の宣伝または批判 (曲紹介ページにおいて)歌詞の独自解釈を展開するコメント、いわゆる“解釈コメ” 長すぎるコメント 『歌ってみた』系動画や、歌い手に関する話題 「カラオケで歌えた」「学校で流れた」などの曲に直接関係しない、本来日記に書くようなコメント カラオケ化、カラオケ配信等の話題 同一人物によると判断される連続・大量コメント Wikiの保守管理は有志によって行われています。 Wikiを気持ちよく利用するためにも、上記の注意事項は守って頂くようにお願いします。
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このページはこちらに移転しました 落ちるなスペルマサプライズ 作詞/94スレ200 落ちるなスペルマサプライズ 落ちるなスペルマサプライズ 落ちるなスペルマサプライズ 落ちるなスペルマステロイド (このページは旧wikiから転載されました)
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こぼれおちる【登録タグ こ 曲 虚空 雪歌ユフ】 作詞:虚空 作曲:虚空 編曲:虚空 唄:雪歌ユフ 曲紹介 心から零した声をアンビエントに 歌詞 (動画歌詞より転載) 青い光に濡らされた 誰もいない夜をさがすの じんわり聞こえるこの声は 私の記憶の中だけ ちらつく影に嘘ついて 寂しくないって呟くの ぼんやり浮かぶあの場所も 私の言葉の中だけ まだ 消えないで 動かないで あと少しここで 泣いていたいの でも 隠せないな つかめないな あかぎれした こんな指じゃ 眠って眠って 置いて行かれて 私はどこにも いられないな 絞って絞って 零した声も 白くなって消えていった (Ah…) まだ残ってるの 覚えてるの ちいさな幸せ ささやく声 でも もういいよ もういらない 私も もうすぐ起きるよ 怖くて怖くて 笑ってたけど 私はここには いられないな にぎってにぎって 繋いだ手も 砂みたいに崩れていった (Ah…) コメント 名前 コメント
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[← 内装 基本とTIPS へ戻る] 物が落ちる原理 よくスタックオブジェを作っていて、何かアイテムを抜いた時、崩れてしまう事がありませんか?(私はよくあります...。) これには法則があり、ちょっとした事で防げます。 まずはどうして落ちるのか、検証してみましょう。 ブラックパールを積んでみました。適当に間を抜いてみましょう。 崩れませんね。ではもう一つ取ってみます。 崩れて隙間が埋まりました。抜いた2個分、低くなってます。 何故崩れてしまうのか、理由は2個目にあります。すぐ下の物を外しても大丈夫なのですが、何故か1段空けて下の物を取ると崩れてしまうのです。(デコツールで下げても同様) また、隙間なく積まれていると、その上は全て落ちて来ます。1段以上空いていれば、そこからは影響を受けません。 高さのある物の場合は、その物がある位置ではなく、その上面から数えます。 上図はテーブルの上にブラックパールを積んでみました。一番上だけ持上げて、影響を受けない様1段空けてあります。まずはテーブルの直ぐ上にある1個を取ります。テーブル上面と、その上のブラックパールの間が、1段空いた事になります。テーブルを取ると、連続して積まれた部分は落ちてきます。一段空けておいた1個は、そのままの位置に残ります。 では、崩さない様に物を取るには、どうすればいいのでしょうか。 答えは隙間の1段を作らない事です。 テーブルで高さ調整する時は、デコツールを使う前にテーブルを外す。 スタックオブジェの間を変える時は、デコツールでオブジェの上まで持ち上げてから外す。 以上の様な対処が考えられます。 また稀に、火が付く物(Torch,Candle,Heating stand)を使った時、その上の物が落ちる事があります。 その場では大丈夫なのですが、メンテナンスを挟むと落ちます。 オマケ:隙間の1段 作らずに済めば良いのですが、オブジェなどの仕上がりで1段空いてしまうことがあります。 すると、そのアイテムをロックダウンしているタイルをキャラが通過する時にでも起こるのでしょうか、いつの間にかデザインが崩れていることがあります。 対策としては、その場所を通らないようにするか、可能なら他のアイテムに埋まって見えなくなるアイテムをはさんでロックダウンしておく、くらいでしょうか。 [← 内装 基本とTIPS へ戻る]
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陽が落ちる(5) ◆S8pgx99zVs 【19:27】 「静謐な病院Ⅲ」 様々な経過を経て、また再び静寂を取り戻した病院。 非常灯だけで照らされた暗い廊下にカラカラという音を立て、此処に残った唯一の生者が歩いていた。 音を立てているのは、彼――トグサが押しているストレッチャーの車輪が回る音だ。 そのストレッチャーには死者――長門有希の遺体が横たわっている。 喜緑江美里が出した条件の一つ ――TFEI端末の確保。 そのために、彼女は深い場所にあった寝所から連れ出され、今此処にいる。 彼女を今まで人目につかない場所に隠しておいたのは、ロックとゲインの気遣いだ。 全身を真っ赤に染め、土に塗れた彼女の遺体はお世辞にも綺麗とは言えない。女性や子供に見せるは酷だった。 そして、ハルヒに対しては喜緑江美里とのコンタクトについてもボカして伝えてられている。 これは遠坂凛の提案だ。聞けば、ハルヒはその周りの人間がひた隠しにしていた、自身の能力に気付いたという。 そして、遠坂凛が言うには、それは生まれたての未熟児の様にとても危うい状態らしい。 扉を押し開け、先程の大部屋へと戻ってくる。 トグサが喝采を受けた三十分前とは打って変わって、人の居ないその広いスペースをとても静かだった。 「長門。……彼女は自分の力に気がついたそうだ」 トグサは横たわる彼女に話しかけるが……、やはり言葉は返ってこない。 もし生きていればどんな答えが返ってくるのか、そう考えてみても……、やはりそれも想像できなかった。 肯定するのか、否定するのか――そのどちらもトグサにはありえるように思える。 ”トグサさ~ん♪” 無音の室内で佇んでいたトグサの脳内に、タチコマのコールが響いた。 台の上の長門有希から視線を引き上げると、トグサはカウンターの上に置いたノートPCへと近づく。 ”大発見~♪” 覗き込んだディスプレイの中には一枚の写真が表示されていた。 それは城内の監視カメラからの物で、そこに写っていたのは広いスペースに鎮座する、複数の起動兵器だった。 「こ、これは……。 人型起動兵器……? それに思考戦車も……」 写真の中に写るのは見たこともないような人型兵器と、逆によく見知った思考戦車の数々。 ギガゾンビは参加者達に支給された物以外にも、それぞれの世界から兵器などを奪っていたということだった。 それらが、支給品として相応しくないから放っておかれたのか、それとも彼らが戦力とするために温存していたのかは分からない。 ただ、これを見ればこちら側がすることは一つだけだ。 「こいつがある部屋までのルートをMAPに出せるか? 出せたら画像と一緒にゲイナーへと転送してくれ」 ”もう用意してありま~す。では、送信しますよ――ポチっとな♪ と完了” 「よし。じゃあ、次はオンラインになっている思考戦車がないかを探して、それに進入しろ」 ”それも、もう終わっちゃってるんですよね~。ホラ、見て見てトグサさん」 ディスプレイに新しく表示された映像には、カメラに向かって手を振る思考戦車の姿があった。 「ずいぶんと仕事が速くなったな。それに気が利く」 23世紀レベルの技術に触れたからか、長門有希の用意したシステムのおかげか、タチコマは急速な自立進化を進めていた。 トグサの見ている前で、二機、三機と思考戦車が画面の内に現れる。 「よし、じゃあおまえらはそこを死守だ。ゲイナー達が来るまでそこを死守してくれ」 そのトグサのコマンドに対し、三機のタチコマが返した返事は――、 ”””もう、やってまーす♪””” 次に写ったのは、思考戦車から放たれる弾丸に身体を散らすツチダマの映像だった。 【D-3/病院・病室/2日目・夜】 【トグサ@攻殻機動隊S.A.C】 [状態]:疲労と眠気、足に結構な疲労、SOS団団員辞退は不許可 [装備]:コルトM1917 (弾数:6/6発-予備弾薬×114発) S W M19 (残弾6/6発-予備弾薬×51発) コルトガバメント (残弾:7/7-予備残弾×78発) [道具]:デイバッグと支給品一式、警察手帳、i-pod、エクソダス計画書 ノートパソコン、"THE DAY OF SAGITTARIUS III"のゲームCD [思考]: 基本:情報を収集し脱出策を講じる。協力者を集めて保護 1:タチコマ達にハッキングの維持、情報収集をさせる 2:集まった情報を選別してゲイナー達に送る 3:喜緑江美里からの通信を待つ 4:敵が現れれば、長門とノートPC、屋上のハルヒを守る ※以下の物が室内に放置されています。 【デイバッグ/支給品一式と食料】 デイパック×16 、支給品一式×24(食料25食分消費) 鶴屋の巾着袋(支給品一式と予備の食料・水が入っている) 【近接武器】 刺身包丁、ナイフとフォーク×各10本、レイピア、ルルゥの斧、獅堂光の剣 ハリセン、極細の鋼線 、スペツナズナイフ 【銃器】 コルトSAA (弾数:6/6発-予備弾薬×34発) ニューナンブ (弾数:5/5/-予備弾薬×39発) 銃火器の予備弾セット(各40発ずつ) ※以下の種類の弾丸がまだ残っています ●5.56mm NATO弾 (ミニミ機関銃) ×40発 ●.32ACP弾 (FNブローニングM1910) ×40発 ●.357マグナム弾 (マテバ2008M) ×40発 ●66mmHEAT (M72ロケットランチャー) ×40発 【その他遠距離武器】 鳳凰寺風の弓(矢18本)、クロスボウ 【その他の武器】 ルイズの杖、五寸釘(×30本)&金槌、黒い篭手(?) 【特殊な道具】 たずね人ステッキ、びっくり箱ステッキ(使用回数:10回) 【一般的な道具】 双眼鏡×2、望遠鏡、マウンテンバイク、ロープ、画鋲数個、マッチ一箱、ロウソク2本 暗視ゴーグル(望遠機能付き・現在故障中)、携帯電話(各施設の番号が登録済み) 【薬】 医療キット 市販の医薬品多数(※胃腸薬、二日酔い用薬、風邪薬、湿布、傷薬、正露丸、絆創膏etc) 【薬局で入手した薬や用具】 鎮痛剤/解熱剤/胃腸薬/下剤/利尿剤/ビタミン剤/滋養強壮薬 抗生物質/治療キット(消毒薬/包帯各種/鋏/テープ/注射器)/虫除けスプレー ※種類別に小分けにしてあります。 【その他】 ヤクルト×1本、紅茶セット(×2パック)、ホ○ダのスーパーカブ(使用不能) ドラムセット(SONOR S-4522S TLA、クラッシュシンバル一つを解体) クラッシュシンバルスタンドを解体したもの、ボロボロの拡声器(故障中) 、簡易松葉杖 蒼星石の亡骸(首輪つき)、リボン、ナイフを背負う紐、真紅のベヘリット ダイヤの指輪、のろいウザギ、ハーモニカ、デジヴァイス、E-6駅・F-1駅の電話番号のメモ ※「惚れ薬」はユービックが起こした爆発により失われました。 【α-5/ギガゾンビ城・格納庫/2日目・夜】 【タチコマ-α】 [状態]:剣菱HAW206 [装備]:主砲-120mm砲(胴体)、副砲-12.7mmバルカン(腕)、スモークディスチャージャー、フレアディスペンダー [思考]: 1:トグサの命に従い、格納庫を防衛する 2:フェイトちゃんに会いたいな [備考] ※S.A.C_「暴走の証明」に登場した剣菱重工開発の最新型重思考戦車 ※基本カラーはベージュで、四足で腕が二本。主砲を持っている。非常に頑丈 【タチコマ-β】 [状態]:多脚型思考6課戦車 [装備]:3連装7.92mmガトリング銃×2(胴体)、5.56mm対人機関銃(腕)×2、対甲グレネード弾、光学迷彩 [思考]: 1:トグサの命に従い、格納庫を防衛する 2:フェイトちゃんに会いたいな [備考] ※G.I.S_に登場した公安六課が所持する多脚型重思考戦車 ※基本カラーは暗いオレンジ。六足で腕が二本。タチコマと比べると二回りほど大きい 【タチコマ-γ】 [状態]:ドイツ製思考戦車 [装備]:3連装7.92mmガトリング銃×4(腕) [思考]: 1:トグサの命に従い、格納庫を防衛する 2:フェイトちゃんに会いたいな [備考] ※G.I.S(原作)に登場した公安一課が所持するドイツ製多脚型重思考戦車 ※基本カラーは都市迷彩(グレー)。四足で前面に腕が四本。タチコマとあまりサイズは変わらないが戦闘用なので頑丈 ※トグサ(タチコマ)よりゲイナー(ユービック)に格納庫の場所と写真のデータが送信されました ※格納庫にある人型起動兵器が、何体あってそれがなんなのかは未だ不明です 【19:28】 「バトル・ロワイアル」 一時期は恐慌状態に陥りかけ、最早これまでと思われたギガゾンビ城内だったが、 その後のフェムトの冷静な行動によって、なんとか指揮を行える程度までは持ち直していた。 セキュリティシステムの一部に加え、通信システムのほとんどを奪われたツチダマ達に、取れる手段は少ない。 だがそれでも、フェムトはツチダマ達の意志をまとめ上げ、その数を生かした作業を進めさせていた。 ――あの時、システムが乗っ取られるというその間際。 フェムトが放った電光は、壁の中を走るケーブルを破壊し、間一髪で最悪の事態を免れた。 その後、各所を繋ぐラインを物理的に排除して再起動した時には、ほとんどの機能が失われていた。 残っていたのは、司令室を含む最重要施設のコントロールと、予備を含む動力関係と他少しの機能のみ。 手足どころか目も耳を奪われた状態に近く、平静を取り戻した後もツチダマ達には深い絶望感が漂っていた。 そんな中でも、フェムトだけは諦めなかった。 冷静に思考を重ね、自分達の勝利条件を提示し、それに至る道筋を立てた。 自らが一つの頭脳となり、他のツチダマ達を手足として、勝利を求め道を邁進した。 フェムトが定めた勝利条件――それは、ギガゾンビの脱出だった。 我が主を助けたい。そして、彼さえ生き残れば何度だってやり直せる。そう考えての選択だ。 他の要素は全て外敵と設定し、状況を単純化させることで他のツチダマ達を誘導した。 自分にできること。自分がしなければいけないこと。――それを見失ったツチダマ達に役割を割り振った。 「管理ナンバー下一桁が0の者達は、情報伝達係りとする。 各所から発せられる情報を周囲に伝播するよう勤めろ。まずはこの情報をだ。急げっ! 管理ナンバー下一桁が1の者達は、ギガゾンビ様救出の任を与える。 閉じた隔壁は無視しろ、エアダクト、点検用通路等を地図から検出し、主の下へ辿り着く路を探し出せ! 管理ナンバー下一桁が2の者達は、タイムマシンの発進準備だ。 搬入路の隔壁の破壊に全力を尽くせ。何を使ってもかまわん。 管理ナンバー下一桁が3の者達は、城内外の警備だ。 オンラインで落とされた迎撃兵器をスタンドアローンで再起動し、侵入者に備えろ。 管理ナンバー下一桁が4の者達は、再起不能になったシステムの破壊だ。 あいつらに乗っ取られたシステムは放棄する。物理的な直接手段で以ってそれを破壊しろ。 管理ナンバー下一桁が5の者達は、起動兵器の発進準備を進めろ。 それを闇の書及びTPへの対抗手段とする。やつらが活動を始める前に一機でも多く起動させるのだ。 管理ナンバー下一桁が6の者達は、城外周の警備へと当たれ。 生き残ったやつらは必ずここに向って来る。それを逸早く察知し――叩け! 管理ナンバー下一桁が7の者達は、動力管理システムの下へと向え。 使用不能となった施設から電源の供給を止めて、それらを全てタイムマシンの発進準備に当てるよう調整しろ。 管理ナンバー下一桁が8の者達は、城内の新しい地図の作成だ。 隔壁が閉じて通れない場所、また逆に新しく通れる場所。それらを記し、城内で活動するもの達に伝播せよ。 管理ナンバー下一桁が9の者達は、城内外で戦う者達の補佐をしろ。 欠員が出た場所に素早く入り込み、陣形に乱れがでないよう努めろ。 また、城外のツチダマは、全て外敵への攻撃に移れ。まずは忌々しい、あの生き残り共をだ! さらに、管理ナンバー下二桁が0の者をその中のリーダーとし、情報を集束させ管理せよ。 ――以上だ。さぁ、動けツチダマ達よ! 我らが主、ギガゾンビ様のために!」 「「「「「「「「「「 我が主、ギガゾンビ様のために!!!!! 」」」」」」」」」」 そして、システム復帰より三十分余り、フェムトを頭脳として一体と化したツチダマ達は、順調に体制を整えつつあった。 フェムトが、司令室の未だMAPを映したモニターを見れば、あの十人の参加者達を現した印は「LOST」となっている。 バトルロワイアルというシステムで管理された参加者達。今や嵌められた枷を自ら外し、ルールの外へ出た。 これはバトルロワイアルが終了したことを意味するのか? ――その自問に、フェムトは重ねて答えを出す。断じて違うと。 ただ、ルールが変わっただけなのだ。より、大きな規模で――より自由なルール――根本的な生存競争へと。 ――ギガゾンビとツチダマ。 ――生き残りの参加者達。 ――闇の書。 ――タイムパトロールに代表される外部からの勢力。 これら四つの勢力。そう、バトルロワイアルのステージは此処に来てその位置にまで達したのだ。 ここから先は真の意味でルールがない。最後に立っていた者が勝者。 ――つまり、こらから行われる事こそが、本当のバトル・ロワイアルなのだ! 一人、モニターを眺めるフェムトの傍に一体のツチダマが寄ってくる。下一桁が0――伝達係りのツチダマだ。 (……遂に向かってきたか) ギガゾンビ城から南、バトルロワイアルの会場内へと続く幹線道路。 そこに配置したツチダマ達からの伝令によって、フェムトは生き残りの人間達が此処に向かってきていることを知らされた。 まずは、ギガゾンビ勢と生き残りの参加者達の直接対決が始まるのだ。 「闇の書は、まだなのだな。……うむ。では城外に出したツチダマ達をそちらへ集中させるよう伝えろ。 それと、押収物保管庫からの物品の持ち出しも許可する。 全責任はこのフェムトが取る。……お前達は全力でやつらを叩け、決してこの城内への進入を許すな」 フェムトの命令を受け取ると、そのツチダマは再び司令室の外へと駆けて行った。 そして、フェムトは再び一人になる……。 「城内外とその周辺に約千体、会場全体のツチダマが集まれば千五百を超える数のツチダマがいる。 例え、あいつらが魔法を使えようとこの数には敵うまい。絶対に我々が勝つ。……そうに決まっている。 ……だが、それでもやつらが此処にまで達しようというなら。 フ、フフフ……、フヒヒヒ……、フヒーー……、ヒ……、ヒ……、ヒ…………」 今やモニターと、非常灯の明かりだけが頼りの薄暗い司令室。その中央、フェムトの目の前に「ソレ」はあった。 フェムトと同じぐらいで、1メートルと少しぐらいの大きさの円筒形の黒い物体。 ギガゾンビが23世紀の世界から逃げる時に持ち出した、――最終兵器。 それは――、 『 地 球 破 壊 爆 弾 』 空虚な空間にフェムトの薄ら寒い笑い声が木霊している。 「フヒ、ヒヒヒ……、フヒー、ヒ、ヒ、ヒ…………。最後に、最後に……、笑うのは……我々だ!」 【α-5/ギガゾンビ城・司令室/2日目・夜】 【ホテルダマ(フェムト)】 [思考]: 基本:ギガゾンビ様の望みをかなえる 1:ギガゾンビ様の脱出を最優先 2:生き残り、闇の書、TPに対処 3:ギガゾンビ様が脱出したら、地球破壊爆弾を爆発させ全ての敵を道連れにする 【α-5/ギガゾンビ城・寝室/2日目・夜】 【ギガゾンビ@ドラえもん のび太の日本誕生】 [状態]:睡眠中 [思考]: 基本:バトルロワイアルを成功させる 1:……………… ※ ギガゾンビ城内の隔壁はそのほとんどがトグサ(タチコマ)によって閉じられています これは、トグサ側の操作によって自由に開閉することができます 現在、ギガゾンビの寝室および、タイムマシン発進所は、隔壁によって隔絶されています ※ ギガゾンビ城の押収物保管庫には、ギガゾンビが各世界から持ち出したものの内 支給品として配布されなかった物が置かれています それが何で、どれだけあるかは不明 ツチダマ達がそれを持ち出して使おうとしています ※ 亜空間より近づく船影の正体は不明です 時系列順に読む Back 陽が落ちる(4)Next 終わりの始まり Border of Life 投下順に読む Back 陽が落ちる(4)Next 終わりの始まり Border of Life 293 陽が落ちる(4) 涼宮ハルヒ 295 夜の始まり、旅の始まり -Fate- 293 陽が落ちる(4) ドラえもん 296 Moonlit Hunting Grounds 293 陽が落ちる(4) 野原しんのすけ 296 Moonlit Hunting Grounds 293 陽が落ちる(4) フェイト・T・ハラオウン 295 夜の始まり、旅の始まり -Fate- 293 陽が落ちる(4) 遠坂凛 295 夜の始まり、旅の始まり -Fate- 293 陽が落ちる(4) レヴィ 296 Moonlit Hunting Grounds 293 陽が落ちる(4) ロック 296 Moonlit Hunting Grounds 293 陽が落ちる(4) トグサ 296 Moonlit Hunting Grounds 293 陽が落ちる(4) ゲイナー・サンガ 296 Moonlit Hunting Grounds 293 陽が落ちる(4) ゲイン・ビジョウ 296 Moonlit Hunting Grounds 293 陽が落ちる(4) 住職ダマB(ユービック) 296 Moonlit Hunting Grounds 293 陽が落ちる(4) ホテルダマ(フェムト) 264 終わりの始まり Border of Life 293 陽が落ちる(4) ギガゾンビ 264 終わりの始まり Border of Life